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semi-MONTHLY edition『産学官連携と金融とコーディネータ』

産学官連携と金融とコーディネータ : コーディネータネットワークメルマガ 公開版 2008.3.10

<CDNETメルマガ 第12号 最終エディション>
No.012 semi-monthly edition

Q11&12総合テーマ:総括と提言

 この度は最終エディションですが、次期メルマガへの課題をお示し下さい。 その場合でも、「産学官連携と金融とコーディネータ」というテーマ性は 維持したいと思います。扱われなかったテーマ、もっと積極的に扱うべき テーマ、扱われたけれどもなお課題とすべきテーマ、今後に向けて、 重要となるテーマ等々、いろいろな切り口があると思います。なお、必ず しも、金融機関が産学連携に取り組む場合に課題となるテーマ性を意味 しません。金融機関関係の皆様方からご覧になった場合の産学官連携の 課題はこれだと思うこと、また、コーディネータの課題はこれだと思うこと なども大歓迎です。引き続き、本メルマガの読者の皆様に楽しいメッセ ージをお送りできる場となることを目指して、努力する所存です。

産学官連携と金融とコーディネータ : コーディネータネットワークメルマガ 公開版 2008.2.10

<CDNETメルマガ 第10号>
Q10:
各種ファンドの活用、運用の仕方についてお聞きします。
間接金融機関である銀行や信用金庫が、産学連携への支援として 大学発ベンチャー等への資金提供者になるには限界があることは 皆様のご投稿により、理解させていただきました。そこでVCなどが 中心になり、各種ファンドが組成され、パフォーマンスも出てきて いるものと思われます。  産学連携ファンド、ベンチャーファンド、地域ファンド、中小企業ファ ンドと様々なファンドが組成されていますが、この度は、産学連携を 促進する上で、これらの各種ファンド間の連携も視野に入れてお聞 きします。  ファンド組成の手法、目的性、運用等を含み、どの様な活用、運用 の仕方をするときに最もよいパフォーマンスを期待できるのでしょうか? また、期待できないファンドとはどのようなファンドを言うのでしょうか?

産学官連携と金融とコーディネータ : コーディネータネットワークメルマガ 公開版 2008.1.25

<CDNETメルマガ 第9号>
Q9:
 金融機関が産学連携に着目する最も大きな理由の1つとして 平成15年3月に金融庁が出した「リレーションシップバンキング (地域密着型金融)の機能強化に関するアクションプログラム」 があることをよく聞かされます。この施策は平成19年に「地域密 着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」とし て継承され、係数目標と期間が排除されました。  まず過去の「リレーションシップバンキング」が出された背景と、 その結果4年が経過して、どのような効果が現れているのかを教 えて下さい。
No.009 semi-monthly edition
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 コーディネータネットワーク会議では、平成16年2月から3月まで、コーデ ィネータネットワークメルマガを非公開版で発行致しました。  この度は、コーディネータネットワーク会議が都市エリア産学官連携促進 事業筑波研究学園都市エリアの中で共同研究事業を展開する中、最終年度を 記念して発行いたします。発行期間は、平成19年9月から平成20年3月までを 予定しております。ご愛読の程宜しくお願い申し上げます。
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■総合テーマ『産学官連携と金融とコーディネータ』 
       (金融の場に携わるプロに聞く)

Q9:
 金融機関が産学連携に着目する最も大きな理由の1つとして 平成15年3月に金融庁が出した「リレーションシップバンキング (地域密着型金融)の機能強化に関するアクションプログラム」 があることをよく聞かされます。この施策は平成19年に「地域密 着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」とし て継承され、係数目標と期間が排除されました。  まず過去の「リレーションシップバンキング」が出された背景と、 その結果4年が経過して、どのような効果が現れているのかを教 えて下さい。

■回答者(掲載順)
丹治 規行  株式会社コラボ産学官 代表取締役
井草 宣義  コラボ産学官埼玉支部(埼玉縣信用金庫内) 事務局長 
  森川 啓志  エヌ・アイ・エフ・SMBCベンチャーズ ファンド管理部 次長 
      
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丹治 規行 株式会社コラボ産学官  代表取締役

 金融庁からリレーションシップバンキング(地域密着型金融)を行う上で、 取り組んで欲しい施策として、新事業を支援することや、疲弊した企業を再 生する支援、金融機関自身の運営状況をきちんと開示する事といった多岐に 亘る課題が示され、その実施のための手段を各地域金融機関が求められたの が平成15年であったわけです。
 その実施手段の一つとして産学連携などは如何でしょうかといった程度の 位置付けだったのですが、産学連携=大学との包括契約締結といった安易な 発想で、簡単に実施できる手段と考えた多くの金融機関が産学連携に着目し たと言っては怒られてしまうかも知れませんが、平成15年から3年間くらい は、地域金融機関は競って大学との包括契約を結びに行ったと思います。  包括契約を結ぶことを否定するわけではありません。そのことで金融機関 がそれまで殆ど無縁であった大学との連携に目を向けただけでも大きな前進 あったと評価しております。
 しかし今後の展開として、金融庁は産学連携の成果を具体的に問うという 形で施策の検証を行うものと思われるため、包括契約から一歩踏み込んだ連 携策を推進出来なければ、産学連携をやっておりますとは言えなくなってし まいます。当然、検証されて何もやってないじゃないかと言われるよりは、 最初から産学連携はやってないといった方が良いと考える金融機関も出てく る可能性があります。
 せっかく緒に就いたばかりの中小企業活性化のための新たな産学連携の枠 組みが、どんな成果が出るのか見ることもなく萎んでいくようでは悲しい限 りです。
 金融機関にとって収益を挙げることは大切ですが、目先の利益に拘ること なく、地域活性化のための一翼を担うボランティアないしは勉強だと思って 参画する、しかし結果として収益に結びつてしまったといったイメージがこ の産学連携活動だと思います。
 本メルマガの役割として、新たな連携アイディアや連携の将来像を金融機 関の皆様方にお示しすることで、少しでも産学連携の将来に希望を持って取 り組んでみようかと考える金融機関が増えてくれることを祈念しております。  また大学や行政の皆様方が地域金融機関に対して、もっと熱いラブコール を送っていただけますよう切に希望いたしております。

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井草 宣義 コラボ産学官埼玉支部  事務局長

 まず過去の「リレーションシップバンキング」が出された背景としては、 何と言ってもバブル崩壊があげられるでしょう。
 それまで右肩上がりで上昇の一途をたどってきた「土地神話の崩壊」、 株式・証券市場の下落・低迷等のいわゆる「資産デフレ」により、民間企業 の相次ぐ倒産による大量の不良資産が発生し、金融機関も未曾有の混乱に陥 り、破綻した有名銀行も少なくありませんでした。
 かかる混乱を収拾するため、金融庁は中小・地域金融機関について中小企 業の再生と地域経済の活性化を図り、併せて、不良債権の早期処理を目指し、 15年度及び16年度の2年間を「集中改善期間」とし「リレーションシッ プバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(旧アクションプ ログラム、15.3.28)公表しました。
 これを受け、中小・地域金融機関は「リレーションシップバンキングの機 能強化計画」を策定し、中小企業金融再生に向けた各種の取組みや、健全性 確保、収益性向上に向けた各種取組みを推進してきました。
 この結果、金融機関が積極的に取引先企業の実態把握に努めるようになっ たほか、企業再生支援にも前向きに取り組むなど、中小企業に対する融資の 姿勢や支援に向けた取組状況は一定の改善が図られました。  しかし、地域密着型金融の本質が、金融機関に正しく理解されていない面 も有ったり、高リターンの実現が図られなかったり、企業の将来性や経営者 の資質等を評価する「目利き」能力が不十分で、依然として融資判断が財務 データや担保力に偏重していたり、利用者に対する情報の開示も不十分であ ったりと、多くの問題点も浮き彫りとなりました。
 そこで、金融庁は17〜18年度の2年間を「重点強化期間」と位置づけ、 これまでの「金融システムの安定」から「金融システムの活力」を重視した 金融行政へとフェーズの転換を図りつつ、地域の特性や利用者のニーズ等を 踏まえ、「自己責任」と経営資源の「選択と集中」により地域密着型金融の 一層の機能強化を図るべく「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアク ションプログラム」(新アクションプログラム、17.3.29)を 策定・公表しました。
 以上のような背景の下で4年間が経過した結果、どのような効果が現れて いるのかについては、以下のような点が挙げられると思います。 創業・新事業支援機能の強化やビジネスマッチングをはじめとする経営 相談・支援機能の強化ではかなり成果が上がっていると思われます。具体的 には
・産学官連携によるベンチャーファンドの創設など、産業支援への取組みが  活発になった
・経営相談等、特にビジネスマッチングが盛んに行われ地域産業の活性化に  貢献するようになった
・中小企業再生支援協議会等を利用し、地場産業の再生に積極的に取り組む  ようになった
・担保・保証に過度に依存しない融資についてはシンジケートローンやスコ  アリングモデルを活用・した融資商品メニューが充実してきた
・財務諸表等よりも、経営者自身や企業の実態を把握し、これを評価し始め  ている
・地域経済の活性化や地域貢献を意識し、積極的に活動するようになった ・人材育成のため、各種の資格取得や研修を通じ、目利き能力の向上に力を  入れるようになった
 また、地域の利用者の利便性向上については
・ホームページ、ディスクロージャー詩による情報開示が充実してきた
・コンビニATM、ATM利用時間の延長、ネットバンキング等により非常に便利  になった

 以上でありますが、今回の内容については金融庁のホームページの『「地域 密着型金融の機能強化に関するアクションプログラム」の進捗状況について』 等を参考とさせていただきました。

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森川 啓志 エヌ・アイ・エフ・SMBCベンチャーズ ファンド管理部 次長
 最初にリレーションシップバンキングが出された背景についてですが、 金融庁の資料などからすると、大手銀行とは異なる中小・地域金融機関の不 良債権の特性、金融行政の護送船団から自己責任の原則への転換が背景とし てあげられるように思います。
 大手企業であれば開示された財務諸表などの情報だけである程度正確に経 営状況を判断することができると思いますが、中小・地域金融機関が主に融資 などをする中小企業の場合は、リレーションシップバンキングの定義で言わ れるところの「経営者の資質」や「事業の将来性」といった定性的な情報が 経営状況を判断する上で重要であり、中小・地域金融機関の不良債権の特性と なっているものと思います。また中小・地域金融機関は、中小企業の再生と地 域経済の活性化を図ることで不良債権を減少させ健全性を確保することが求 められているわけですが、上記の「経営者の資質」や「事業の将来性」とい った定性的な情報をいかに融資判断などに取り入れるかが中小企業の再生と 地域経済の活性化につながり、しいいては他行に比べ高い収益をあげること になるのだと考えられます。リレーションシップバンキングに消極的な 中小・地域金融機関は整理されることとなり、そこに自己責任の原則がある と考えます。
 次にリレーションシップバンキングによってどのような効果が現れてい るかについてですが、金融庁や各中小・地域金融機関が公表している様々な 取組みに係る数値などから効果の有無を言うのは、基準となる数値が無い ので難しいと思います。また、各中小・地域金融機関があげる取組みには、 結果を数値化できないために効果の有無を言うことが難しいものも多いと おもいます。もし効果の有無を言うことが出来るとしたら、さらに時が経 ち、地域経済の活性化の有無がマクロ的な経済指標などで明確になったと きではないでしょうか。ただ少なくとも、中小・地域金融機関に、収益を あげるには地域経済の活性化への貢献が必要であること、他行との横並び が許されないということなどを認識させる効果はあったのではないかと思 います。
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※本メルマガで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、
各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
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◆編集長から(寄稿者のみなさんへ)◆
 この度も、皆様からの重厚な回答をいただきまして、厚く御礼申し上げ ます。今回のテーマは、地域金融機関がらみの、ある意味で特殊なテーマ性 であったため、3人の投稿者となりましたが、いずれも、所謂リレバンとは、 一時的な政策に終わるものではなく、地域金融機関としての通常業務として の意識改革が進められるべき施策であることを学ばせていただきました。  この度も皆様の御協力に対して、厚く御礼申し上げます。

 さて、次回投稿テーマは以下のとおりです。
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Q10:
各種ファンドの活用、運用の仕方についてお聞きします。
間接金融機関である銀行や信用金庫が、産学連携への支援として 大学発ベンチャー等への資金提供者になるには限界があることは 皆様のご投稿により、理解させていただきました。そこでVCなどが 中心になり、各種ファンドが組成され、パフォーマンスも出てきて いるものと思われます。
 産学連携ファンド、ベンチャーファンド、地域ファンド、中小企業ファ ンドと様々なファンドが組成されていますが、この度は、産学連携を 促進する上で、これらの各種ファンド間の連携も視野に入れてお聞 きします。
 ファンド組成の手法、目的性、運用等を含み、どの様な活用、運用 の仕方をするときに最もよいパフォーマンスを期待できるのでしょうか? また、期待できないファンドとはどのようなファンドを言うのでしょうか?
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産学官連携と金融とコーディネータ : コーディネータネットワークメルマガ 公開版 2008.1.10

<CDNETメルマガ 第8号>
Q8:
 金融機関関係の皆様方にとって、リスクをとって有望企業を育てる、という 風土の形成のために有効だと思われることはどの様なことでしょうか? また、地場産業を育てるための地域金融機関の役割とは、「リスクを取ること」 という言い方がありますが、実際はどうなのでしょうか?

No.008 semi-monthly edition
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 コーディネータネットワーク会議では、平成16年2月から3月まで、コーデ ィネータネットワークメルマガを非公開版で発行致しました。  この度は、コーディネータネットワーク会議が都市エリア産学官連携促進 事業筑波研究学園都市エリアの中で共同研究事業を展開する中、最終年度を 記念して発行いたします。発行期間は、平成19年9月から平成20年3月までを 予定しております。ご愛読の程宜しくお願い申し上げます。
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■総合テーマ『産学官連携と金融とコーディネータ』 
       (金融の場に携わるプロに聞く)

Q8:
 金融機関関係の皆様方にとって、リスクをとって有望企業を育てる、という 風土の形成のために有効だと思われることはどの様なことでしょうか? また、地場産業を育てるための地域金融機関の役割とは、「リスクを取ること」 という言い方がありますが、実際はどうなのでしょうか?
■回答者(掲載順)
丹治 規行  株式会社コラボ産学官 代表取締役
井草 宣義  コラボ産学官埼玉支部(埼玉縣信用金庫内) 事務局長   
森川 啓志  エヌ・アイ・エフ・SMBCベンチャーズ ファンド管理部 次長       
平尾  敏  野村證券株式会社 法人企画部公益法人課 課長     
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丹治 規行 株式会社コラボ産学官  代表取締役

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお付き合い下さい。  さて、金融を業とする場合、本来最も腐心しなければならないポイント は「リスクとリターン」のバランスを如何に上手にコントロールするかに 尽きると思います。本来と書きましたのは、現実は必ずしもそうではない ということだからです。特に間接金融(融資業務)を主として行う地域金 融機関に於いては、バブル崩壊以降、超低金利が定着している環境の中で はリターンの上限を自ら低めに設定せざるを得ないため、リスクの高い取 引に積極的に参入することが出来ないわけです。
 ある意味「リスクとリターン」のバランスは取れているのですが、上手 にコントロールする、つまり効率よく収益を高めていくという面では全く 機能不全に陥ってしまっているのが現実ではないでしょうか。  今回のテーマである、リスクをとって有望企業を育てるという点に関し て肝に銘じておかなければならない事は、有望企業は必ずしもリスクの低 い企業ではないということ、寧ろリスクがかなり高い企業が大半であると いうことです。
 有望企業の出現が地域の活性化に役立つことは万人の認めるところです が、地域金融機関が現状の金融スキームのみでリスクの高い有望企業を十 分育成支援出来るかといえば、先に記載いたしました通り否と言わざるを 得ません。  そこで地域活性化ファンドといった直接金融(投資等)の手段を活用し たり国などの助成金を活用して有望企業のインキュベーションが行われて いるのが現状ですが、それも需要を満たすほどの供給量とはとてもいえな い金額です。
 現時点では地域金融機関などが直接金融を駆使してハイリスク・ハイリ ターンの育成手段にいきなり乗り出すにはマインドの醸成や経験が不足し ており、何年後かに一部資金が直接金融を通じて有望企業に流れ込むよう になれば地場産業の活性化を実感できるようになるかも知れませんね。 ただ、地域金融機関などに対し、今出来ることとして提言したいのは、有 望企業はリスクが高いから支援しないのではなく、どうすればリスクを低 下させて支援を行えるようになるかを考えるべきであるということです。
 有望企業は斬新な発想力を持っているものの、営業能力、経営能力、製 造能力といった企業運営として不可欠な面が欠落しているケースが多いと 思われます。その一部分でも支援してあげることが出来れば、相当のリス ク低下が図られ金融支援が可能になるかも知れません。地道な活動ではあ りますが地域金融機関としての役割は、大きなリスクをとることよりリス クを低くするお手伝いから始める事も重要に思えます。
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井草 宣義 コラボ産学官埼玉支部  事務局長
 先ず前段の問いについては次のように考えます。
従来の金融機関の中小企業の育成は「融資」を通じて行ってきました。こ の融資には一定の原則があり、全ての金融機関がこの「原則」に則り 融資を実行してまいりました。
 その「原則」とは主に安全性・収益性・成長性・公共性の四つを指し、 この「原則」に従い厳正な与信判断がなされ、貸出し資産に対する「信用 リスク」も厳しく管理されております。「融資」の原資が預金者からお預 かりした大事な「預金」であり、「預金者保護」に徹する必要があること から、「融資」は元利金100%の回収が原則であり、4原則のうち最も 重要視されるのが「安全性」であろうかと考えます。このように、従来の 金融機関では「安全性」が重要視され、リスクをとることには消極的であ りました。 
 ところが「産学官連携」が声高に叫ばれるようになってからは、財務内 容等の企業体力が脆弱でも「高度な技術や知的財産」を保有し、それが新 規性・成長性・市場性に富んでおれば、金融機関も積極的にリスクをとり 有望企業を育てる必要があるとの意見が各方面から出されてきました。 しかし、「融資」という手法は予想されるリスクの最少化を図った上で実 行するものであり、大きなリスクは馴染みません。
 そこで次に考えられるのが「投資」という手法です。「融資」は「100 %回収が原則」であるのに対し、「投資」は「一部の元本未回収の発生は 止む無し」というように考えているように思われます。つまり「融資」は 安全性・確実性を重視するのに対し、「投資」は成長性・収益性を重視す るため「融資」よりも「投資」のほうがリスクのとり方が大きいと思われ ます。
 然しながら、自行(自金庫)で単独の投資ファンドを有する地域金融機 関の数は、現時点では数%にも満たないのではないでしょうか。そして、 何故「投資」(=リスクテイク)という考え方が金融機関になかなか定着 しないのは、従来の金融機関はリスク回避(リスク最少化)の為、担保・ 保証人の評価を重要視して技術や特許等の知的財産の評価を軽んじて来た ためであります。従って、リスクをとって有望企業を育てるという風土が 形成される為には、まだまだかなりの時間を要するものと思われます。
 今後、我々地域金融機関が積極的にリスクテイク出来るようになるには、 技術や特許等の知的財産の評価ができる部門の設置、もしくは「技術的目 利き能力のある組織・機関」との連携が重要と考えます。また、中小企業 金融のあり方も「融資」から「投資」へ、即ち「間接金融」から「直接金 融」へと少しずつ比重を移してゆくべきと考えます。さしあたり資金量的 にどの程度が妥当かについては、(株)コラボ産学官の丹治社長が日頃か ら提唱するように「各信用金庫の貸出金残高の1%を投資ファンドに」す るだけでも、全国的には莫大な金額となり、中小企業育成のためには強力 な財源確保となることでしょう。
 後段の問いについては次のように考えます。  地場産業が存在する各地の地域金融機関が「地元との運命共同体」的に 既にある程度のリスクをとって支援・育成しているケースも少なくないよ うです。しかし、これで十分かというと、そうでない場合が多いようです が、どこの地域金融機関でも「取引顧客層」の全てが地場産業関係者とい うことはなく、むしろそれ以外の産業と個人顧客の取引ウエートのほうが 地場産業関係取引よりも高いというのが一般的であり、地場産業だけに特 化した施策を打ちにくいというのが実態ではないでしょうか。    
 また、時代は刻一刻変化しており、地場産業自身も過去の最盛期を懐か しむだけの旧態依然としたものであってはならず、最近の「経済の国際化 とグローバル化」に対応すべく、各地の「地域資源」を有効活用して「創 意工夫」によりナンバーワンよりオンリーワンを目指すべきと考えます。
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森川 啓志 エヌ・アイ・エフ・SMBCベンチャーズ ファンド管理部 次長

 メルマガの第1号にて、産学連結の活動においてリスクに似合うリターン が望めるスキームなら投資対象になる可能性があることを述べ、第3号にて、 産学連携の場にお金が回る仕組みというのは、投資対象に対し持続的に投 資が行われることであり、持続的に投資が行われるには平均的なリターンが 投資金額以上でかつリスクに似合ったものであることが必要だと述べました。 リターンとリスクが何かということに触れていませんでしたが、投資におけ るリターンとリスクとは、ポートフォリオの収益率の期待値が平均的なリタ ーンであり、分散(または標準偏差)がリスクとなります。
 さて、質問の「リスクをとって有望企業を育てる、という風土の形成のた めに有効だと思われることはどの様なことでしょうか?」についてですが、 金融機関として顧客から預かった資金の運用をしている立場からすると、 先ずリスクを取るとは上記のリスク(分散)の大きなポートフォリオを形 成するということであり、ポートフォリオの平均的なリターンがリスクに 似合あっていること、および投機ではなく運用であることが重要になるか と考えます。
 有望企業を育てることを目的とした投資の平均的なリターンがリスクに似 合ったものであれば運用として成り立ちますが、もしリスクが過大であれば、 それは投機になるのではないでしょうか。また、質問は些か感情的な面を問 うているように感じるのですが、感情が投資に影響すれば、これも投機だと 思います。個人が個人資産を投機に向けるのなら許されるでしょうが、金融 機関が運用の為に預かっている顧客の資産を投機に向けることは出来ません。 また、金融機関が自己資金を投機に向けることは、株主などの利益を損なう 行為ということになり問題だと考えます。
 次に質問の風土についてですが、この風土を企業風土とした場合、金融機 関が有望企業を育てることを理念として挙げ、各社員がそれを志として企業 風土を作り上げるということになるのかと思います。明確に表現されないま でも、有望企業を育てることを理念として掲げるVCや銀行は多く有るのでは ないかと思うのですが、実際に企業風土が作り上げられているかどうかは判 りません。言えることは、企業風土は経営者次第ではないかということです。
 最後に地域金融機関の役割についてですが、質問が言うように、地場産業 を育てるための地域金融機関の役割がリスクを取ることであると言われてい るのかどうかは知りませんし実際にどうかも知りませんが、もし地域金融機 関が地場産業を育てるために過大なリスクを取っているとすると、金融機関 としては問題となる運用だと考えます。リスクを取るとは相応のリターンが 期待できて取れるものであり、単にリスクを取ることが金融機関の役割では ないことを考える必要があると思います。
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       平尾  敏 野村證券株式会社 法人企画部公益法人課 課長
 ご質問にある金融機関とは、「銀行を業とする金融機関が」ということだ と思います。証券会社は業務上、リスクをとる事が本業となりますので、今 回のテーマにはお答えする立場にはないと思われます。地域金融機関が果た すべき地場産業育成のミッションを考えた時の、個人的ではありますが、 私なりの感想を述べてみたいと思います。
 地域の中堅企業を育てるときに、地元の銀行の役割は非常に大きなものが ありますが、必ずしもそのミッションが充分に達成されている訳ではありま せん。特に、担保が充分に手当てされていない企業の場合、一番卑近な例が、 企業の資金調達の手段として、融資より増資が優先されるケースが多くあり ます。
 本来バンキング業務とは、融資を希望している企業のビジネスモデルを充 分に吟味し、将来性を評価して資金を貸し付けることだと思います。勿論、 小さいロットからスタートするのでしょうが、それ相応の金利が求められる ことは言うまでもありません。
 金融機関がとるリスク管理として、企業の信用力と反比例して設定する金 利のレベルが、ここで言うリスクのとり方だと思います。勿論、海外(とり わけ米国)では当たり前のように行われている業務が、日本では充分に機能 していません。いわゆる、担保偏重主義の弊害です。逆に言うと、ビジネス モデルに対する評価、事業家に対する目利きの能力が乏しいことを自ら表し ていることに他なりません。
 一方、地域産業の振興・育成に、県庁レベルでベンチャーファンドを組成 し、貸付や補助金の代わりに出資に応じることで資金援助をしている自治体 がありますが、これも賛成しかねます。銀行が本来業務を全うしていないと 同様に、本来果たすべき行政の様々な施策を充分に施さずに、安易に資金を 提供する図式がここにも見えます。地域経済の活性化は地域生活の根本です。 公共事業投資が、地域の産業だと公言して憚らない自治体もありますが、こ こにも自分のミッションを忘れた(放棄した)地方の悲劇を見ることができ ます。
 最近、取り扱う知的財産(特許等)を吟味して融資をし始めた一部の信用 金庫のビジネスモデルに注目しています。金融業界のイノベーションが我が 国の産業のイノベーションを実現しようとしています。
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※本メルマガで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、
各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
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◆編集長から(寄稿者のみなさんへ)◆
 明けましておめでとうございます。
 今年も宜しくお願い申し上げます。

 正月早々にもかかわらず、この度も重厚なご投稿を頂きまして、皆様に 厚く御礼申し上げます。
 この度は、金融機関がリスクを取るとはどのような事なのかをメイン テーマとして掲げております。回答は様々な角度から寄せられました。
 リスク(分散)の大きなポートフォリオを形成することから始まり、 ポートフォリオの平均的なリターンがリスクに似合あっていること、 投機ではなく運用であること、技術や特許等の知的財産の評価ができる部 門の設置、「技術的目利き能力のある組織・機関」との連携、「融資」か ら「投資」へ、即ち「間接金融」から「直接金融」へと比重を移すこと、 営業能力、経営能力、製造能力などの企業運営として不可欠な面を支援す ることにより、リスク低下を図り、金融支援が可能になるようにすること 等々。
 特に最後の項目、即ち、「営業能力、経営能力、製造能力などの企業運 営として不可欠な面を支援することにより、リスク低下を図る」ことは、 投稿者が書かれていますように地道な活動ですが、大きなリスクをとるこ とより、リスクを低く押さえる手伝いをする意味で、筆者には重要なリス クテイクのキーポイントであると思えました。
 リスクを取るとは相応のリターンが期待できて取れるものであり、単に リスクを取ることが金融機関の役割ではないとした記述にも大変説得力を 感じました。
 地域金融機関として、リスクテイクの風土の形成には何が有効なのか?  この答えは、「大きなリスクをとることよりリスクを低くするお手伝い」 を産学連携の手法をも活用して、如何に継続的に地道な活動を展開してゆ けるかに集約されるように思えました。
 この度も、第1番目の読者として皆様のご投稿から有意義な勉強をさせて いただきました。誠にありがとうございました。
 さて、次回投稿テーマは以下のとおりです。
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Q9:
 金融機関が産学連携に着目する最も大きな理由の1つとして 平成15年3月に金融庁が出した「リレーションシップバンキング (地域密着型金融)の機能強化に関するアクションプログラム」 があることをよく聞かされます。この施策は平成19年に「地域密 着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」とし て継承され、係数目標と期間が排除されました。
 まず過去の「リレーションシップバンキング」が出された背景と、 その結果4年が経過して、どのような効果が現れているのかを教 えて下さい。
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産学官連携と金融とコーディネータ : コーディネータネットワークメルマガ 公開版 2007.12.25

【第7回目】 ==質問:江原秀敏 コーディネータネットワークメルマガ編集長==
Q7:
 産学官+金(金融機関)の連携を進める上に於いて、金融機関側が 持っている中小企業に対する目利き能力の中に、一般的には技術的目利き 能力は入っていないものと考えます。
 しかし、実際の産学連携を橋渡しする場にあっては、常に直面する課題 だと思います。その場合、自分たちはその役割ではないとして、大学側の コーディネータと連携して動くべきなのでしょうか?
 金融機関が産学連携案件をコーディネートする場合、担当者の相談案件 識別能力を高めてゆくためには、どのような方策が有効なのでしょうか?
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 コーディネータネットワーク会議では、平成16年2月から3月まで、コーデ ィネータネットワークメルマガを非公開版で発行致しました。  この度は、コーディネータネットワーク会議が都市エリア産学官連携促進 事業筑波研究学園都市エリアの中で共同研究事業を展開する中、最終年度を 記念して発行いたします。発行期間は、平成19年9月から平成20年3月までを 予定しております。ご愛読の程宜しくお願い申し上げます。
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■総合テーマ『産学官連携と金融とコーディネータ』 
       (金融の場に携わるプロに聞く)

■回答者(掲載順)
丹治 規行  株式会社コラボ産学官 代表取締役
井草 宣義  コラボ産学官埼玉支部(埼玉縣信用金庫内) 事務局長   
森川 啓志  エヌ・アイ・エフ・SMBCベンチャーズ ファンド管理部 次長  
      平尾  敏  野村證券株式会社 法人企画部公益法人課 課長     
上原 健一 有限会社つくばインキュベーションラボ 取締役  
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丹治 規行 株式会社コラボ産学官  代表取締役
 ご存じの方も多いと思いますが、地域金融機関のあるべき姿を「リレー ションシップ バンキング」とし、その実現に向けての施策を各金融機関 に求めて以来約5年が経過しました。
 「目利き人材」の育成は、担保・保証に頼らないで金融支援を行うため には、欠くべからざる対応として注目されております。また「目利き人材」 育成セミナーも全国各所、各団体で開催されているようです。
 しかし金融機関が育成を目指す「目利き人材」像の中に、技術の目利き が出来る人材の育成は多分入っていないと思いますし、セミナーのカリキ ュラムにも含まれている例は希だと思います。
 今後、地域経済の活性化を促進させるためには、ユニークな物作りや高 品質な物作りの出来る企業の存在が必要だと考えた場合、その発想や技術 のレベルを適格に判断できる能力を有した人材がいないとすれば、金融機 関としては金融支援を諦めるか、目をつぶって投機的行動を採るかの二者 択一の選択となる訳です。結論は明確ですね。それが今日まで産学連携案 件に資金がつかなかった理由です。
 結論と致しましては、金融機関が技術の「目利き人材」を育成する必要 はないと思いますし、出来ればその役割は大学や行政等のコーディネータ の皆様方に担っていただきたいと切望しております。そのためには金融機 関の人間が的確な企業情報を上記のコーディネータの皆様に提供できるか、 また情報交換をスムースに行なえるネットワークや人間関係を構築できる かが大きな鍵を握っていると考えます。
 金融機関が企業に対して資金を提供するということは、当然提供した資 金が返還されることを前提としておりますが、よしんば返還されない場合、 お上に対しては、ここまで徹底して調査分析をして可能性を吟味した上で の失敗は仕方がないと言い切れるようにしておく必要があるのです。です から今後、金融機関とコーディネータの皆様との信頼関係を緊密にしてお く必要があり、お互いの立場を十分理解し合えるよう、セミナー形式でも 良いのですが、接する時間をより多く持つべきです。そうすることにより 金融機関側の人間も技術相談のツボ?的な部分に理解が及ぶようになる可 能性は大だと思います。
 ただ私としましては「目利き」の最重要ポイントは人物の目利きに尽き ると考えており、どんな素晴らしい技術であっても代表者の人物次第では ものにならないケースを見てきております。
 これから先も金融機関には技術の目利きは困難であるとは思いますが、 更に重要な人物の目利きに関しては高い経験値を積み上げているはずです から主導的な役割を果たせると考えております。その目を更に磨くために は、訪問する企業の全てを話して貰えるくらいの信頼を得られる様、相手 の企業に興味を持ち、訪問に十分な時間を費やすことをお勧めいたします。
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井草 宣義 コラボ産学官埼玉支部  事務局長
 先ず、前段の『産学連携に携わる金融機関の人間が、クライアントから 出された「技術課題相談案件」に対し、自分たちはその役割ではないとし て大学側のコーディネータと連動して動くべきなのかどうか?』について は次のように考えます。
 理工科系より文科系出身者が圧倒的に多い我々金融機関職員が「技術課 題相談案件」を大学側コーディネータにすぐにつなぐ前にやるべき事があ ります。それは、「技術課題相談案件」が出された企業の産学連携に関す る基本的事項を金融機関側が第1のフィルターにかけることであります。
 その為には中小・零細企業に直接訪問し、 
?産学連携に関する社長の取組姿勢(熱意・真剣度)はどうか?
?工場等の生産施設・設備・機器・製品を見て、大学等と共同研究するだ  けの技術水準にあるか?研究者は出せるのか?
?その「技術課題」は新技術・新製品の開発につながる新規性があるのか?
 →大学等が論文に取上げられる内容か?(これが一番難しい) ?研究開発期間はどの位で、研究開発資金はどこまで出せるのか?
?大学等と何をどの様にしたいのか?(共同研究)、又は大学等に何をど  の様にしてもらいたいのか?(委託研究)等のことについて「相談案件」 (ニーズ)の内容を的確に把握する必要があります。
 以上のようなことを確認した上で大学側につなぐと、そうでない場合より も共同研究や委託研究の成功率が高くなります。
 ところで、金融機関側のコーディネータに求められる「目利き能力」とは 何か?という点について触れてみると、コーディネータ自身が「相談案件」 を解決する訳ではないので、金融機関側のコーディネータにとって必要なの は、単なる「技術的目利き能力」ではなく、「調整能力、人的ネットワーク、 意欲、情熱等」であると考えます。
 従って、金融機関側コーディネータにとって一番大事なことは上記?〜? のことを念頭に置き、熱意を持って多くの案件を取り扱ってみる事だと考え ます。
 それにより、どこの大学(又は公的研究機関)に何を得意とするどんな研 究者がいるかを経験的に把握する事ができ、それ以降の相談案件が時間を掛 けずに処理することができます。
 次に、後段の「金融機関担当者の相談案件識別能力を高めてゆく為には、 どの様な方策が有効なのか?」については以下のように考えます。
?外部から専門家を招き人材育成のための研修・教育を実施すること。又は  外部の「人材育成研修」に参加すること。
   例えば、全国都道府県の「産業労働部」に所属する産学連携支援機関・組 織や中小企業振興公社および産業技術総合センター等からコーディネータや アドバイザー等の専門家を招き、行・職員の研修等を実施する。さらに、上 記専門家を招き、県内各地で行う「出張技術相談会」に支店長や担当役席を 同席させ、実学で経験する方法も有効です。
?地元大学(又は公的研究機関)の「研究発表会」「シーズ発表会」には時  間の許す限り積極的に参加し多くの先生(研究者)方と懇親を深め、各先  生方の専門分野を把握すること。
  ?金融機関プロパー職員ではなかなか「技術的目利き能力」の向上が図れな  い場合には、保険商品や投資信託販売時に保険会社OBや証券会社OBを  起用しているのと同様に、大学(又は公的研究機関)のOBを採用し、  これに当たる方法もあります。
?結論的に言うと「習うより慣れろ」の通り、いろんなことを経験的に学ぶ  事が必要です。そして経験的に学んだ事は「一般論」として体系的に纏め  る事が出来ます。これらを教科書として、「人材育成教育」を行えば多く  の行・職員の「産学連携の基礎知識」のレベルアップを図ることが出来る  ものと考えます。
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森川 啓志 エヌ・アイ・エフ・SMBCベンチャーズ ファンド管理部 次長
 「技術的目利き」とは何を意味するのでしょうか。比較的多くの人が、 ある一個人がある技術に係る説明を受けたり資料を読んだりしたときに、 この技術が物になるかどうか短時間にそして直感的に判断し当てる事を 思い浮かべるのかもしれません。質問の「技術的目利き」は、このよう な意味を多分に含んでいるように思います。
 私は、「技術的目利き」とは、技術評価を行うという機関や企業と同様に 「新規性」、「実現可能性」、「市場性」について評価することだと考えて います。評価の対象となる技術の分野、技術の開発状況、既存市場の置き換 えか新市場を生み出す技術かなどにより評価手法はかなり違ってくるものと 思われますが、各項目の評価において出来る限り資料を集め、数値の比較が 可能なものについては比較検討し、仮定を置くものについては根拠を明確に し、評価が不可能なものについては不可能である理由を明確にする、そして これら事実と仮定を基に推測する、というのが評価であり目利きだと考えま す。
 しかし現実としては、時間や予算の制約もあるのでしょうが、「技術的目 利き」を必要とする側が「簡単に良いのか駄目なのかの意見が欲しい」と 回答しか求めないために、感情論と言うか憶測の域を出ない「意見」が 「技術的目利き」として通用しているように思います。
 最初に戻って言うと、技術が物になるかどうかの短時間で直感的な判断 =憶測の域を出ない「意見」、といったところでしょうか。
 さて、質問の「技術的目利き」を「新規性」、「実現可能性」、「市場性」 について評価すること、憶測の域を出ない「意見」が一部に入るとしても全 体として投資判断に使えるレベルであるとすると、銀行などは分かりません が、多くのVCは投資判断に「技術的目利き」を行っているのではないでし ょうか。
 1人の担当者が投資案件のデューデリジェンスにおいて多種多様な技術分 野を網羅し「技術的目利き」まで行うことは時間的にも能力的にも不可能 ですから、数人の調査専門部署が担当し、足りないところは外部に委託し ているのではないかと思います。
 外部に委託すると「技術的目利き」の能力が無いと考える方もおられる かと思いますが、外部への委託の有無に関わらずデューデリジェンスに 「技術的目利き」が取り入れられていれば、会社として「技術的目利き」 能力を持つとしてよいのではないかと考えます。ゆえに、「技術的目利き」 が金融機関の役割ではないのではなく、本業である投資などに「技術的目 利き」が用いられてはいるものの、産学官連携に係る事項にまで経営資源 を割く余裕が無いのではないでしょうか。
 ただし、仮に会社として持つ「技術的目利き」が産学官連携において使 えたとしても、活用するには、担当者の技術や業界に関する知識(基本的 な考え方を含む)などが問題になるように思います。
 未だに今回の質問の意味を理解できておらず想像の域を出ませんが、質 問の根底に有る産学官連携の問題は、金融機関の担当者やコーディネータ ーの研究や事業への理解ではないでしょうか。理解と一言でいっても物差 しが有るわけではないので適切な表現が見つからないのですが、例えば大 学の研究成果と企業を結びつける場合、最終製品が何であるといったキー ワードを用いたマッチングでは不十分で、もっと深く研究成果や事業を理 解しマッチングする必要が有るという事ではないかと考えます。
 そうだとすると、少なくとも技術や業界に関する知識が必要条件(十分 ではありません)であり、金融機関の担当者やコーディネーターが十分に 持っているか、または調べれば理解できる基礎的な考え方を持っているの か、ということが問題として浮かび上がってきます。
 この問題を解決する為の施策は、正直思いつきません。技術のベースと なる学問は積み重ねの学問だと思います。ゆえに、地道に担当者やコーデ ィネーターに努力して頂くしか方法は無いように思います。
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      平尾  敏 野村證券株式会社 法人企画部公益法人課 課長
 例えば、証券会社が上場会社を担当するときの心構えとして何が必要か、 という命題があります。私の答えは「社長の代わりはおこがましいにしても、 その企業を経営しているのだという意識が必要で、その為に何をすれば良 いかを一日24時間、一年365日、常に担当会社の事を考えること」だと思っ ています。
 金融機関の担当者が、お客様である企業に対して一番重要なサービスは、 当該企業の売上と利益に貢献することだと思います。その意味では、シー ズの売り込み先を探しているコーディネータの方々と利害は一致します。
 コーディネータの皆様は、勿論ご自分でシーズの売込みをしなければなり ませんが、一人の活動には限界がありますから、一つの手段として優秀な企 業担当者を金融機関に探すことは有力な方法だと思います。      
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上原 健一 有限会社つくばインキュベーションラボ 取締役
 技術的目利き能力というものの必要性については、産学連携活動の中で よく語られることですが、私はそれほど重要だとは思いません。極論を言 えば、技術的素養というのは、あればよい程度であって、無くとも致命的 ではないと思うのです。
 我々が、産学官連携活動によって実現しようとするものは、社会の中で 有用な製品やサービスです。そのための源は、決して『優れた研究成果』 や『画期的な技術』である必要はないものです。つまり、お客様や使用者 が喜ぶ顔が浮かぶ製品やサービスが必要なのであって、供給側に属する研 究者などが誇る技術や研究成果などは真に重要ではないと思います。
 もちろん、優れた研究成果や技術であることに越したことはありません が、これらばかりを珍重する精神は、旧式な線形イノベーションモデルに とらわれ過ぎているように思います。良い技術シーズや研究成果が「まず 最初に」必要だというのは、産学官連携活動での誤解の1つだと思います。
 また、イノベーションを起こす中心は企業家です。研究者ではありませ ん。なぜなら社会の中で人々が新たな価値を実感できる事業を遂行するの は企業家ではありませんか?
 そうは言っても技術的な理解力は重要だという意見もあると思いますが、 それでも私は心配はしていません。今までの経験から、一流の研究者は、 非常に高度で難しい専門的な話を誰にもわかるように平易に解説する能力 を持っている事を知っているからです。二流の研究者は、難しいことを 難しく言う人たちです。
 もし、みなさんが研究者と話をして難しいことを難しくしか教えてくれ ない方であれば、そんな研究者とシーズは諦めて、さっさと別な専門家を 探したほうが絶対に良い結果が期待できます。研究シーズや成果は、実現 したいニーズに合わせて探せば良いのです。そのシーズも唯一無二という ことはめったにありません。この方法でだめでも、別なアプローチは必ず 存在しますし、一流の専門家も必ず全国を探せば居ます。
 このように考えてくると、金融機関が産学連携案件に関わる場合、担当 者の相談案件識別能力を高めてゆくためには、何が重要であるかが見えて くるように思います。
 なによりも地域での意欲をもった企業家や事業者の存在が、重要な時代 です。となれば金融機関の担当者は限られた業務時間の中でどのような相 談案件識別能力を高めるかは明らかでしょう。多くの事業者と広く、深く 付き合う時間こそ優先されるべきですし、その中で各事業者が目指す事業 アイデアによってどんなお客様の喜びを生み出すのか、総体として社会に どんな喜びを作り出したいと考えているのかを見抜く力を養うこと、社会 を多様に見る目を磨くことが最も重要だと思います。
 このようなニーズが明確で方向性が見えていれば、具体的にどんなシー ズが役立つかの判断も容易にできることが多いと思います。
 このような機能は、昔から金融マンが持っている機能に過ぎないように 思えてなりません。産学官+金の連携などという表現のように大学や行政 関係者が関わるとなぜか仰々しいモノの言い方となっているように思いま す。
 このメルマガの読者のみなさんの考えとは異なるかもしれませんが、す でに産学官連携活動は、社会の中で普通に行われている活動であると私は 考えています。特別なコーディネータや機関が必要だった時代は過去の話 になりつつあると思います。
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※本メルマガで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、 各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
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◆編集長から(寄稿者のみなさんへ)◆
 この度も年末のお忙しい中、示唆に富む重厚なご投稿をいただきまして 厚く御礼申し上げます。
 さて、本メルマガは総合テーマに、金融とコーディネータという言葉 が入っておりますように、金融機関に所属ないし関係する皆様をコーディ ネータと見なし、その立場からどのような目線を持って産学連携の現場に 係わっておられるかをお聞きしながら、その視点を読者の皆様に参考にし ていただくことを目的にしております。
 そのような皆様から、「技術的目利き」という課題に関しては、“事実上” 不必要との意見が聞かれました。主たる能力は「調整能力、人的ネットワーク、 意欲、情熱等」だとする意見に代表されます。また、その目を更に磨く為には 「訪問する企業の全てを話して貰えるくらいの信頼を得られる様、相手の企 業に興味を持ち、訪問に十分な時間を費やすこと」だとするものです。熱意 を持って多くの案件を取り扱うことにより、自ずから目は養われるという 意見もありました。それらの経験を体系的にまとめれば金融マンのための 産学連携「人材育成教育」の教科書となるとの意見もありました。
 筆者は質問の中に、「技術的目利き能力」と「相談案件識別能力」の2つを 強いて分けて使用しましたが、この度の結果は、圧倒的に「相談案件識別能力」 を重視し、「技術的目利き能力」を課題とはしないとの意見であったように思 えます。
 しかし、投稿者のお一人からはVCの投資案件に於いてはデューデリジェン スにおいて多種多様な技術分野を扱うために数人の調査専門部署が担当し、足 りないところは外部に委託しているとの記述にありますように「技術的目利 き能力」はVCにあっては金融機関として、あるいはそこに属する者として 投資業務にあって「当然のこと」としながらも、産学連携までをも目利きする には「経営資源不足」とのことであったかと思われます。
 筆者も、仕事柄、産学連携ファンドを運用する現場にあって、金融機関の営業 マンから「技術的目利き」に属する話を聞くのは日常的なことであり、同時に、 その結果の投資判断として「相談案件識別能力」が来るものと捉えております。 金融マンの現場の「技術的目利き」能力はこの度の投稿にも見られるように、現 場を多く踏んだ経験値に属するものが大きく、決して専門的知識ではありません が、それでも専門家とのやり取りの現場を多く踏んだものが技術的是非を熱く 討議する場を日常的に経験しております。
 そのような意味から、「技術的目利き能力」と「相談案件識別能力」の双方 の能力を如何に高めてゆくかの知見を皆様から勉強させていただいた次第です。 この度も誠にありがとうございました。執筆者の皆様、良いお年をお迎え下さい。 年内大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。
 さて、次回投稿テーマは以下のとおりです。
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Q8:  金融機関関係の皆様方にとって、リスクをとって有望企業を育てる、という 風土の形成のために有効だと思われることはどの様なことでしょうか? また、地場産業を育てるための地域金融機関の役割とは、「リスクを取ること」 という言い方がありますが、実際はどうなのでしょうか?
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